2024年3月の業界動向とウワサ


 スマスロが市場で受け入れられたことによって、パチンコ以上にパチスロの勢いが増しているのは間違いないところ。前回のコラムでも触れましたが、パチンコは「ラッキートリガー」搭載機が3月になりホールデビューし、こちらは一定の評価を得ているようです。その一方で次々と新機種が導入されるパチスロはさらにド派手な出玉アピールを繰り広げており、今年に入って導入された機種が昨年発表機種に比べて全体的に射幸性が少なからずアップしているのもポイントの1つでしょう。

 また、パチスロ営業を後押しするイベントの存在も忘れてはいけません。やはり「高設定があるかも」というメッセージがあるかないかで朝イチの稼働が大きく変わります。ゆえに現時点ではイベント自体禁止であるものの、取材や来店といった形で何かしらのメッセージを発信する手法は相変わらず使われているようです。

 昨今では「晒し屋」や「データまとめサイト」といった一般人を装ってSNS等でホールの内情をリークする動きが目立ちます。実際には、イベント会社等がホールから依頼された内容をSNS発信しているものがほとんど。そもそも一般ユーザーが明日どこどこのお店で高設定が投入されるということを知る由もないのですが、「過去の旧イベント日(●が付く日など)には高設定が多数投入されていたから今回も期待できる!」という内容が発信され、そしてその結果「やはり●が付く日は高設定が多数投入されていた」みたいな結果を報告することで実質イベント日を告知する手法となっています。

 しかしこういった広告手法は限りなく”黒”に近いもので、来店する演者からも「何がOKで何がNGか」が分かりにくくて困っているという声が聞こえてきます。そもそも演者たちも脱法して仕事をするつもりはないので線引きをはっきりして欲しいという声や、逆に来店を含めてすべて無くすべきだという意見も少なくなかったりします。そこで昨年からこの辺りのルール・線引きを明確化し、この3月には追加の対処方法が発表されました。その内容はもちろん完璧ではないものの、ある一定の線引きができたことで過去におけるイベント的なこと(演者による来店告知など)は引き続き可能となりました。それとは別にSNSを利用し第三者を装ってイベント内容を発信するようなやり方は難しくなると思われます。

 大手法人が運営するホール企業が多くなり、時代背景的にもコンプライアンスを守る意識が高くなっている昨今、グレーなやり方によって世間から叩かれることを避けたいと考えるのは一般的でしょう。そんな中で「やれること・ダメなこと」がある程度分かるようになることは、パチスロ営業にとって追い風となるのは間違いありません。5号機の終焉以降、スロット専門店の営業は成り立たなくなっていましたが、スマスロ・スマパチの登場によって増えると予想されたコンビニ型店舗もこれから増えてくる可能性があり、いずれにせよパチスロにとってはますます追い風となりそうです。

 パチンコもパチスロと同様にイベント的手法で集客を図ることは可能です。しかし、パチンコは結局のところ「整備の範囲」でゲージ調整するのが一般的ゆえに、その遊技台のポテンシャルが上級者には即座に見抜かれてしまうという、イベントとは相性の悪いゲーム性なのも問題だったりします。そういえば数年前に一時期だけですが”設定付き”のパチンコが登場しました。その時は流行りませんでしたが、パチンコもまたスマパチを普及させる1つの手段として”設定付き”を推してもいいところに来ていると考える関係者も増えているようです。

 現在のパチンコ機はP機、e機どちらにせよ出玉性能は高いです。極限まで性能を高めていることもあり(総合的にスペックが甘いこともあり)、ヘソ賞球は1個返しでスタートを高くできない(回せない)機種ばかりが目立ちます。ゆえにギャンブル要素に比重をおいて遊ぶことが主になり、ゆっくり腰を据えて……という遊び方は難しいのが現状でしょうか。今後スマパチを普及させていくにあたり、これ以上射幸性を上げるのではなく、パチスロの良いところは取り入れ、少しでも長く遊べるような取り組みをしていかないと将来的に厳しいと思います。もちろん射幸性の高い機種を望むユーザーもいますが、いま以上を求める声はそんなに多くないのではないでしょうか……。

PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。