2023年10月の業界動向とウワサ


 やはりスマパチの普及は難しいのか? ……10月初旬、この秋話題のマシンがホールデビューしました。パチンコは「e新海物語349」、パチスロは「Lエヴァンゲリオン ~未来への創造~」の2機種です。年末年始営業に向けて弾みをつけるはずの2機種だったのですが、導入初週からどうも怪しい雰囲気。海物語もエヴァもファンには最大級の認知があるコンテンツなのですが……。

 スマパチ「e新海物語349」は、c時短獲得チャンスを50回転の周期毎に抽選するという新しいゲーム性を搭載してデビューしました。それ以外は今までの海物語の流れを汲んでいますが、周期ごとに10分の1で時短突入を抽選するという取り組みには賛否あったようで、スマパチであること、そして海物語として周期時短抽選機能はいかがなものか?といったところから販売台数が思ったほど振るわなかったのは事実のようです。とは言うもののパチンコ最強コンテンツであり、成功すれば長期稼働が見込めることもあって、ユーザーの反応には多くの業界人が注目していました。

 しかし残念ではありますが、導入初日から客足がまばらのホールも目立ち、周期時短抽選機能も中途半端なゲーム性に捉えられてしまっているのが現状。50回転毎に10分の1の抽選に当たっても多くが50回転の時短なので(あくまでおまけ機能)、これならば無くてもいいよねと市場では判断されたようです。また、海物語ユーザーは年配層のお客さんが多いため、ハイエナするために回転数をチェックする輩たちの存在もマイナスに働いているようです。

 メーカーとしてチャレンジすることは決して悪いことではありません。今回のスマパチ新海物語は市場に受け入れられなかったわけですが、業界の歴史全体で見れば海物語のシマが長期稼働することによって入替費用も抑えられ、安定したホール経営ができた時代も過去にありました。今はそのポジションをエヴァ未来とリゼロ鬼がかりが担っていますが、スマパチ市場で新たな流れを作れる可能性があっただけに本機のつまずきは痛いところ。

 このように相変わらずスマパチでスマッシュヒットが出ていない現状で、パチンココーナーはエヴァ未来の独壇場と言っても過言ではなく、多くのホールが増台に増台を重ねて多台数を抱えている状況です。そんな勢いに乗るべくスマスロで発売されたエヴァシリーズ最新作ですが、ゲーム性のベースはあのミリオンゴッドを彷彿とさせ、爆発力もかなり高いとの前触れでした。ホールサイドは当然期待を込めて飛びついたわけですが、こちらも初週からなかなか厳しい稼働状況となっています。

 スマスロエヴァの問題点は低すぎる初当り確率に尽きます。導入前からその確率の低さは注目されていたものの、いざ稼働させてみると当たり前ですがやはりボーナスが遠い。類似するマシンには元祖GODシリーズの「ハーデス」がありますが、こちらは天井到達で全回転演出を経由して期待値の高いボーナスに当選する可能性がありました。しかしエヴァは……しかもその天井も凄く遠い。ボーナス当選すればそれなりの出玉を得ることはできても、そのハマリの深さゆえユーザーが追えていないのが現状です。

 インターネット上の書き込みを含めて初期印象が悪い機種は、ホール単体で出玉を出したところで稼働を上げるのはなかなか難しい。よってホールサイドも初手から機種の育成を諦め、とにかく抜けるだけ抜いて早期撤去を考えるのが一般的です。そうなると、スマスロエヴァは導入前から賛否あったものの「行ける!」と判断して勝負に出た(多台数購入した)ホールも数多くあるわけで、そんなホールからすれば多額の機械代支払いだけが残って早々に撤去(少なくとも減台)を考えることになり、そしてそのツケは残念ながらユーザーに回ってくるのです。ファンとしても他人事ではない話なのです。

 昨今はこういったことがないようにホール企業も相当厳しい機械選定を行っています。しかしながら海物語やエヴァといった特級版権でもこういったことが起こってしまう。ホール運営も本当に難しい時代に直面していると言えますし、こういったことが続けば財務状況も一気に傾いてしまうでしょう。多くのユーザーからすれば、別に新台じゃなくても遊べる調整ならば機械なんて何でもいいやと思うこともあるかも知れません。しかし、ホールの集客を支える柱となるのはやはり新台。それは間違いない事実なのです。

PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。