2023年9月の業界動向とウワサ


 残念ながらホール数は年々減り続けている現実があります。全国的にホールの大型化が進み、地域一番店はほぼ郊外にある超大型ホール。東京や大阪に代表されるいわゆる繁華街には、駅前ホールでまだまだ強豪店はあるものの、昭和から平成初期にかけての「駅前にはパチンコ店が必ずある」といったことは無くなってきました。

 それはすなわち、旅行先やちょっとした外出の時間潰しでパチンコを打つといった習慣が無くなったのだと思われます。また、遊技する人とそうでない人が明確に分かれたこともあるでしょう。遊技する人は最新台が導入されイベント等も行っているホールまで(たとえ郊外店だとしても)わざわざ足を運びます。昨今のパチンコ・パチスロは「よし打つぞ!勝負だ!」という腹の括りを必要とする波荒マシンが多いので、そうなるのも当然の流れでしょう。

 もちろん遊技台が総じて波荒になったというだけでなく、諸々の価格高騰によってホール側にも余裕が無くなり、還元率自体が落ちていることも重要なポイント。ホールが以前よりも出玉を出せない=お客が勝ちにくくなったことも、おいそれとホールに行けなくなった理由のひとつだと思います。

 ここで昭和の時代まで遡って恐縮ですが、以前は町内会程度の単位で魚屋さんや八百屋さんなどが存在していました。しかし、小売スーパーがその地域に出店されたことで閉店する個人店が出てきて、さらには大型のショッピングモールが出店してきたことで、完全に個人店はその煽りを受けて街中や駅前から消えていきました。パチンコホールもそのような時代の流れに沿ってスクラップアンドビルドされていくと前々から予想されていたので、現状の流れはある意味で予想通りとも言えます。

 どんな業態でもそうですが、お客様(=ユーザー)はやはり便利でなんでもあって集客があるところに集まります。パチンコ業界でいえば、たとえ郊外店であってもそういうホールは集客できているわけで、小規模の駅前ホールはむしろ時代の流れに抗って生き延びてきたとも言えます。誤解して欲しくないのは、駅前立地はやはり集客としては優秀なので、今後も生き残るホールはあると思います。ただ、本格的に立地だけでは戦えない時代が来たことを伝えたかったのです。

 さて、本題はここから。スーパーや大型モールが主流になったことで起こった事柄はそのままパチンコ業界にも適用されるのかを考えてみます。まず、多くのスーパーが力を入れているのがPB(プライベートブランド)商品の開発です。例えば紙パック飲料であれば、実際は大手メーカーが作っていますがネーミングはPBブランドというもの。正直なところ味もそれほど変わらないので、必然的にPB商品を購入するというのは消費者として当たり前の消費行動だと思います。

 パチンコ業界のPB機といえば、ダイナムグループが力を入れていることで有名。現状では、実際に発売された機種をダイナム仕様にスペック変更したPB機として追加開発をメーカーに発注し、通常の販売価格よりも安い値段で決まった台数分を購入するといった手法が取り入れられています。その他にも、6号機時代に突入した直後には、ジャグラーに酷似したノーマルAタイプのマシンをチェーン店同士で共同開発するという取り組みも目立ちました。こちらは数多くのホールに導入されるところまで進みましたが、残念ながら稼働的に成功した事例はほぼ無かったと思われます。

 現時点ではこの程度の取り組みで留まっていますが、PB機に関してはそろそろ本腰を入れて大手チェーンとメーカー側が手を組んだ取り組みを始めてもおかしくないと想像します。実際には「取り組みが始まった」というウワサ話すら聞こえてこない状況なのですが、多くのホールがチャレンジした「ジャグラー」を意識したマシンに関しては、きっと開発に着手したいメーカーやホールもあるのではないかと。

 これは何もジャグラーが単純で簡単に作れるというわけではありません。ジャグラーはどの機種よりも高いブランド力がありますので、たとえゲーム性が同じようなものを作ったとしてもユーザーはきっとジャグラーシリーズを選ぶでしょう。これこそが安心感であり、今まで培った信用でもあります。しかしながら、ノーマルタイプゆえに似通ったものが作りやすいというのは事実。ある程度の実績があるメーカーとPB機としてタイアップすれば、打感を含めて完成度の高いものが作れるはずで、その遊技機を例えば現状価格の半分の値段で買うことができれば経営は少しでも楽になる。結果的にそれがユーザーへの出玉還元にまで辿り着けばいいのですが……。こういった動きでもないと、ホールサイドも苦しいままではないでしょうか。

PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。