2022年6月の業界動向とウワサ


 パチンコメーカーの高尾が5月末に民事再生法の適用を申請しました。久しぶりのメーカー破綻のニュースです。高尾自体は再建を目指す方向で進めたい意向のようですが、業界の川上に君臨していると言われたメーカーもまた苦しいところまで追い込まれているのは間違いないようです。

 現在、メーカーが苦しい理由はいくつかあります。まず大前提として機械が売れていない。絶頂期に比べれば半分以下ではないでしょうか。そうなると、ヒット機種を持たないメーカーから潰れていくのは必然です。規則変更が決定してから、機械が強制的に入れ替えられることによってメーカー側に一時的な特需が生まれると言われてきました。しかし、その期間にコロナで世界が一変。メーカー側の開発体制にも狂いが生じて、ホール団体は監督官庁に特例で設置期限の延長を認めてもらうことに。そうなると旧規則機の方が出玉性能が良いため、ホールは機械をあまり入れ替えることなく旧規則機中心で営業。これによって直近での機械販売数はかなり鈍化しました。

 そうして新規則機への入れ替えリミットが近づくと、業界の先を見据え投資するに値しないと判断し廃業するホールが増加。また、多くのホールでは大量購入を控えて機械を大事に扱う方向へシフトし始めています。もちろん現行機のスペックを遥かに凌駕したものが登場すれば流れは変わるのでしょうが、現状はこのような商流が定着しつつあります。もはやメーカーとして強気でいられるのは、ほんとに一部の大手メーカーのみといった状況です。

 さらに中国のゼロコロナ政策やロシアウクライナ戦争による流通の乱れの影響による部材問題もかなり顕著になってきており、たとえヒット機種が出たところで思い通りの台数を供給できないという問題があります。いまホールが最も欲しがっているジャグラーシリーズも、今年の新規受注を全くしていないらしく、おそらく部材の見通しが全く立たないのだと思われます。

 このように様々な要因で機械が売れていないわけですが、それに加えて開発期間の長さや開発費の高騰。例えば液晶付きパチンコ機の場合、映像ボリューム増等によってその部分だけで数億円という費用がかかっています。そうなってくると5000台販売してやっと開発費をペイできるということになり、それ以上を販売しないと利益が出ないのです。

 以前ならば5000台程度であればお付き合いの範囲で何とか売ることが可能でした。ホールが10000軒あれば単純に半分のホールが1台買ってくれれば達成可能な数字です。しかし現在は新台を購入するホールは5000軒あるかどうかで、その店舗数からして半分になっており、しかも購買意欲は下がっています。実際のところ、現状では10000台売れたらヒット機種と言われる時代になりました。そういうことで、多くのメーカーで販売まで漕ぎ着けたものの、単体のプロジェクトとしては赤字だったなんてことが起こっているのでしょう。まあ、ぶっちゃけ今までがバブルだっただけとも考えられるんですけど…。

 今後はスマパチ・スマスロに舵を切っていく業界ではありますが、果たしてホールにはついていく行くだけの体力があるのでしょうか? メーカーもまた先を見据えた先行投資開発をどこまで進められるのか? その答えはこれから数年後に出てくると思いますが、どうも今までのようにトントン拍子では進まない様相を呈しています。

PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。