2021年3月の業界動向とウワサ


 昨年、パチンコ・パチスロ大手メーカーのセガサミーホールディングスが大々的な希望退職者の募集を行いました。結果的に700人近くの応募があったと発表され、パチンコ・パチスロ部門のメンバーもかなり減ったと言われています。果たして今後もこれまでと同じクオリティで機械開発することができるのか? そう言わざるを得ないぐらい主要部門から人が抜けてしまっているようです。もちろんグループ全体として見ればゲームをはじめ様々な事業がありますので、パチンコ・パチスロの将来を鑑みつつ開発ライン数を減らすといった選択も理解はできます。このようにメーカーサイドも先を見越した事業展開が活発となってきました。

 大手と言えば、これまた上場メーカーのひとつである平和もこれまでオマケ程度だったゴルフ事業がかなり大きなウェイトを占めるようになってきたことが決算発表を見ていれば分かります。コロナ禍において、ゴルフ事業は持ち直しを見せる業種のひとつであり、今後はもっと力を入れてくるのは間違いないです。

 中小メーカーのひとつ豊丸産業も希望退職者を募るなど、メーカーの規模縮小が当たり前になってきた昨今ですが、それほどまでメーカーという商売が厳しいのでしょうか……ある開発関係者に話を聞くことができました。

 今後メーカーが生き残るには、まずは開発コストの概念を変えていかないと立ち行かないのは間違いないとのこと。現在市場に投入されている機械は3〜4年前に開発がスタートしているものが大半で、特に液晶を搭載しているものは間違いなく3年近くの時間を要しています。開発スタート段階では当時の市場感によって予算組されており、一流版権ならびにメインコーナーに設置されるようなタイトルならまだしも、それ以外となると軒並み5000台を下回るような市場環境では赤字になるタイトルがほとんどのようです。

 簡易シュミレーションとしてはこんな感じとのこと。1台40万円で販売した機械が5000台売れると売上は20億円。そのうち部材原価が半分とすると残ったお金は10億円。つまり開発費とその他諸々の経費で10億円を超えてしまうと商売としては赤字となる。ある程度の時間をかけて開発したと予想される液晶搭載マシンは5000台(あくまでも超簡単な目安)を下回ると儲からないということがわかります。なお、版権等により変動するため参考程度ですが、パチンコ機はそれなりの大型液晶を搭載して作り込んでいれば平気で開発費は10億円を超え、パチスロもまたその程度の金額はかかると言われています。

 ホールサイドは逆にここ数年、旧基準機を大事に使いながら新台をかなり買い控えることができたので、客数が多少減ったとは言えども財務状況は悪くないはず。ある意味で買い手であるホールサイドに選択権がいくつもあるうちに、メーカーが疲弊していったのが現状です。こうなると買い手が強いので、大手チェーン店などは台数をまとめるからと値引きを求めたり、チェーン店での独占導入なんて話もこれからどんどん進んでいくと予想されます。まあ、購買という意味では市場原理が真っ当になったとも言えますが……。

 ただし、お金をかけたものが開発できないとなると行く先が心配になるのもこれまた事実。ホールサイドは現在のトレンドを見て営業しますが、メーカーサイドは先を見据えて機械を開発するのが仕事。試作機を作ったり、試験研究分野にもお金を使います。こういったところにお金が流れなくなると、今と同じものは作れても新たなものは開発できません。なのでメーカー規模縮小の流れはパチンコ業界全体として決して良いことではないのです。一度諦めてしまうと、そこから再度立ち上げるには相当の時間もかかりますし。

 今から10年後、パチンコ業界だけではなく、様々な職種に大きな変化が出ていることでしょう。デジタル化なんて生易しいものではなく、場所時間といった概念が変われば余暇の過ごし方や考え方も大きく変わります。その流れと同時に現在メーカーの置かれた環境を考えれば、今と同じ遊び方ができるのはあと数年かもしれないなと……。

PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。