2017年6月の業界動向とウワサ


 パチスロの高射幸機撤去問題が未だくすぶっていますが、5.5号機と呼ばれる現行基準機も、今年の9月末を持って販売できなくなります。先日、日電協というパチスロメーカー団体の総会があったのですが、5.9号機を経て、速やかに6号機に移行していきたいとコメントしていました。1日でも早く5.9号機基準から先に進みたいというメーカー側の気持ちの表れではありますが、それがユーザーにとってどのようなものになるのか、見えてきたスペックから検証していきたいと思います。

 5.9号機から新たに搭載しなくてはならないものとして、よく言われているのは2つ。1つは機能的なもので、役比モニターの搭載です。これは筐体内部に取り付けられ、出玉の状態を可視化できるようにしたものと言えばわかりやすいでしょうか。打ち手にとってはほぼ関係ないものですが、メーカー側からすると、筐体設計を変更しなくてはならなかったり、部品代が余計にかかったり……。利権のために役比モニターを搭載しなくてはならなくなったのでは? との声も根強いですね。

 もう1点は3000枚リミッターの搭載です。こちらは連続してコインが獲得できる状態で3000枚に到達するとリミッターが発動してしまうというもので、つまり一撃で得られる出玉は3000枚までということになります。これはユーザーにとって痛い仕様ですか?

 しかし考えようによっては遊技時間を計算しながら打てるようになるとも言えます。仮に2枚純増だとしたらMAX1500ゲーム。そこで当たりが止まるのだから、2時間ちょっとしか当たりが続かない=閉店2時間前までは勝負できるということになります。取り切れずヤメであったり、どこまで続いたのだろうという悶々とした閉店を味わうこともなくなりますね(笑)。

 そう考えると、5.9号機も現行の5.5号機とそれほど変化はないと感じるかも知れません。要はリミッターが搭載されている番長3でしょう……みたいな。いやいや、メーカー関係者に話を聞くと、他にも色々な取り決めがあって、かなり開発が制約されているとのこと。まず壊滅的に厳しいのは、ボーナス以外の当たりに設定差を設けてはいけないこと。ARTも当たりと表現しましたが、出玉が増える状態に設定差があってはならないのです。これはかなりの痛手。5号機の出始めにボーナスにおまけ程度のRTが搭載されていた機械がありましたが、あのような仕様がベースになります。

 また、設定ごとに出玉率の差を付けようとするならば、ボーナス確率に大きな差を付けなければならず、ベースも同様となります。つまり設定ごとに出玉率の差があればあるほど、設定看破がしやすくなるわけです。某メーカーの試算では、上下出玉率に10%以上の差を付けるならば、ボーナス確率だけでなく、1000円あたりの回転数も5ゲーム程度変わってくるとのこと。つまりこれもまた、5号機当初のノーマルパチスロ(エヴァ)のような仕様にしなくてはならないということです。

 先日、山佐から一風変わったノーマルパチスロ「ハイパーリノ」が発売されました。本機はなんと設定が1段階。システム的にはベースを下げてボーナス確率を極限まで上げているのですが、これは先を見越して、“パチスロから設定という概念を無くしてみたらどのような反応をするのか?“ということのテストケースなのかも知れないなと、こういった情報を整理していくと見えてくるものがあります。

 その他にも事細かに抜け道を通れないよう決められている5.9号機。今年の年末にはその姿がユーザーにもお披露目されることになるでしょう。いい意味で予想を裏切ってもらえることに期待したいですね。

PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。