2013年10月の業界動向とウワサ


 9月末。週末の金曜日だったでしょうか。ある機種について「販売中止になるって聞いたけれど本当かな?」という問い合わせが午前中から相次ぎました。電話の本数は時間が経過すればするほど増えていき、真実を確認しようとメーカー営業マンに聞いても「何も聞かされておりません」という返答。「営業のトップが本社に集められて会議をしている」という情報が午後になって流れ始め、いよいよホールサイドは対応しなくてはならない事態に。

 結果、翌日土曜日の日付でメーカーサイドから正式な販売中止の案内が流れます。販売中止になった機種は、10月7日からホール導入される予定だった「CRAスーパー海物語IN沖縄3遊パチ」。いわゆる沖海3の甘デジタイプで、約10万台売れたとも言われている大ヒット機種。この納品が約10日前にストップがかかったのだからホールサイドにも大なり小なり影響があるでしょう。

 この原稿を書いている時点では、メーカー側から正式に販売中止のアナウンスが出され、その文章内に「今後の対応は後日改めてご相談」とあります。実際ホールサイドからすれば、予定されていた新機種が導入されないとなると色々と損害が出ることになります。

 新台を入れ替えるには所轄警察署に変更承認申請書を提出します。変更承認申請書には設置されている機種を撤去して、その場所へ新たに新機種を設置する旨を記します。新機種にはそれぞれ番号が振られ細かく管理されていますが、まずこの変更承認申請書を提出し直さなければならない。単純に書類を作り直して再提出し直せばいい地域ならば問題ありませんが、地域によっては入替の順番がくじ引きで決定されていたり、一度申請書を取り下げた場合は入替ができなくなってしまったりと、他メーカーの機種入替にまで問題が及ぶ場合もあります。

 その次に販促関係。入替10日前であれば、場合によっては入替チラシのデザインが出来上がっていてもおかしくない時期です。当然、作り直しを余儀なくされるため手間と実費がかかる。また、甘デジ海クラスになれば店内装飾も発注済みというホールもあるでしょう。後々購入する可能性の高い機種ではありますが、こういったことのリスクも含めて作業は増えたはずです。

 そして一番の問題は甘デジ海が導入できなくなった分の穴埋め機種補填です。多くのホールは1〜3作前の甘デジ海を売却して、新機種を設置するという流れを取っています。具体的にいえばデラックス海や大海物語2の甘デジを撤去して、沖海3の甘デジを設置するという流れですかね。甘デジ海シリーズは中古機でそれなりの値段がつくので、撤去を前提にすでに売り先を決めてしまっていたところも少なくないはずです。

 そうなると撤去する機種の行き先は決まっているが、導入される予定の機種がなくなるといった状況になります。その分の補填をしなければならないので書類が出る新機種を購入する、もしくは中古業者から中古台を買って書類をすぐに出してもらうなどしなくてはなりません。そういった準備が出来ればいいのですが、希望に沿った機種があるとも限らず、ホール側からすればいらないものを買って営業しなくてはならないところも出てくるでしょう。そんな問い合わせも含めて、私自身もここ数日は対応にてんてこ舞いだったわけですが、忙しい割には結局あまり儲かっていないところが機械屋として一番問題なんですが……。
PROFILE/某メーカーの営業職を経験後、ホールコンサルティング事業を興すなど業界歴は長い。現在は販社に勤務。業界動向を独自の視点で分析し販売実績を伸ばしているやり手営業マン。業界メディアにも幅広い人脈を持つ情報通でもある。